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「部長、今までお疲れ様でした」
そう言って若い女子社員が花束を差し出した。赤白黄色、色とりどりの花。それに対して「綺麗だな」以外の感想が思い浮かばない。
「ありがとう」
そう言って私がぎこちない手つきで受け取ると、夕陽が差し込む会議室内に拍手が湧く。女子社員の背後で手を叩いているのはこれまで苦楽を共にしてきた仲間達だ。終業時刻を迎えると、まだ残っている仕事があるだろうに、彼らがこの部屋に案内して最後の手向けを渡してくれたのだ。
今日、私は四十年以上務めたこの会社を退職する。
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