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ちらりと妻の顔を見る。
遠藤は夫婦旅行を提案してくれた。何をしたいか決まっていないのならば、アドバイスに従ってとりあえずはそれをやってみるか?
「ん? ご飯粒ついてます?」
「……ううん。何でもない」
私は心の中で首を振った。
旅行が楽しくてもそれは一時の事だ。家に戻ればまた途方もなくまっ白な時間が待っている。
彼女との話もその時は見たもの聞いたものの感想を述べ合えば良いが、日常に回帰した後は、むしろその落差から日常の中に会話のネタを探すのに苦労しそうだ。
お金に限りがあるからそう何度も旅に出られない。
「……ごちそうさま」
結局、好物の味を堪能せずに私は食事を終えた。
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