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モニターの中で男が呟く。
妄想の中の住人には嘘を吐く必要はない。
誰も知らないアイドルは、変わり果てた姿で見つかった。
彼女は自分の部屋で、妄想に取り憑かれた男の手によって生涯を閉じたのだ。
男にすれば自分を裏切った相手を、彼女にすれば赤の他人によって事件が起きてしまったのだ。
佐竹さんが怒りを押し殺す理由は理解できた。
精神が正常な犯罪者と、そうでない犯罪者に下される罰が違うことなど素人の僕だって知っている。
諦めの交じった苦笑いを背に、僕は日比谷のビルを後にした。
***
アオイから相談を受けたのはクリスマスイブの数日前。
アオイは期末の試験も終わり、大学の受験もなんとか推薦を取り付けたみたいだった。
例の失踪騒動は、病欠って事で収まったらしい。
「普段の心掛けのおかげだよね」
「よく言うよね。英語が赤点にならなかったのは僕のおかげだな」
「あのさ幸也……ちょっと心配な人がいるんだ」
アオイの申し訳なさそうな表情が、僕のアノ事を必要としているってのは明白だ。
考えてみれば、アオイからの頼まれごとは勉強を教えるぐらいで、水鳥の時も僕が巻き込んだだけだ。
要するに、貸借りでゆけば僕は借りっぱなしなのだろう。
「良いよ。会ってみれば良いんでしょ?」
「うん……悪いね、幸也」
「なんだよ、アオイらしくないなぁ。それで? その人の何が心配なの」
「わかんない……わかんないけど、トラブルに巻き込まれてる気がするんだ。僕の余計なお節介かもしれないから、幸也に確かめて欲しいんだ」
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