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「ふーん。そう云う事か……どんな人?」
アオイはつまらなそうに呟いた。
「最近は忙しくて会えてないんだ……従姉妹のお姉ちゃんで、私より六つ上なんだ」
おかしな話だ。
会えてもいないのに心配な事がある?
もっと詳しく聞こうとした僕に、アオイは会ってから直接感じて、と告げた。
感じて……まあ、先入観ってのは邪魔なのだと水鳥の件で学んだ気もした。
了解と返事を返し、アオイを家まで送った。
真冬のバイクは寒くて、厚手のフリースに革ジャンで完全武装だ。
アオイも同じ様な格好で背中に張り付いていて、僕は人の体温で背中が暖かいなんて当たり前の事に気が付いた冬だった。
冷えた空気に晒された横浜の街は奇麗だ。
海に浮かぶ船の灯りも街灯も、冬の空気の中でクリアに視線に飛び込んでくる。
口元から吐き出す白い吐息もなんだか愉快だ。
「なんか綺麗だねぇ」
わざわざ海沿いの公園を歩くなんて珍しいことだけれど、アオイの指定した待ち合わせ場所なのだからそれで良い。
「襟元が寒いんじゃない? アオイ」
「うわっ! 彼氏みたいなセリフだな。幸也」
「少なくともアオイの両親はそう思ってる……」
「だよねぇ。悪いね幸也」
「そんなこと思ってないくせに……まっ! 一人きりのクリスマスじゃなくて良かったと思っておくよ」
気分一新だと言って、アオイは長かった髪を切った。
襟元から細い首が覗くベリーショート。
マフラーを巻きつけていても寒そうに見える。
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