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男は左腕から血を大量に流しながら少し離れた公園へ逃げ込んだ。
「はあ、はあ・・・。ここまで来れば大丈夫だろ。」
左腕を庇いながらベンチに重い腰を置いた。
それにしてもなぜ俺が・・・。
思ったより出血が酷く、意識が朦朧としてきた。
俺は中流階層の底辺ながらも必死に足掻いてきた。
工場を大きくし、いずれ別れた息子に会って謝りたかった。
それももう叶わないのか・・・。
ベンチに身体を委ね、目を瞑っていると複数の足音が聞こえてきた。
しかし男にはもう逃げる気力は残っていない。
目を開けるとスーツ姿の男3人に囲まれていた。
「観念したか?」
オールバックの男が冷たい視線を送る。
こんな目で見られるのはもう慣れたものだ。
「もう逃げるつもりはないよ。でも教えてくれ。何故俺が対象になったんだ?俺は底辺ながらも中流階層の人間だ。」
「あぁ、この前まではな。クリーン法が導入されて5年。掃除は毎日続いた。ホームレスに犯罪者は片付いたんだよ。それでもこの国はまだゴミで溢れかえっている。そうなると必然的に新しい下流階層の人間が必要になる。お前は気付かないうちに下流階層の仲間入りをしていたんだよ。」
なんだ、そーゆーことか。
もう手遅れだったんだな。
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