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「そうか、納得したよ。でも最期に一目でも息子に会わせてくれないか?」
「高梨、撃て。」
オールバックの男は聞こえてないかのように振る舞う。
下流階層の人間とは会話することも煩わしいのだろう。
俺はもう、喋る事さえ国に許されないのか。
「いや、でも・・・。」
銃を握っている若い男は何故か躊躇った。
「どうした?まさか、情でもうつったのか。」
若い男は押し黙る。
上流階層の人間でも人の心を持つ人がまだいたのか。
あぁ、そんな目で見ないでおくれ。
哀れみの目。
久しく見る優しい目だ。
「もういいよ、君。ありがとう。俺には君くらいの年齢の息子がいてね。事情があって暫く会っていないんだ。君のように優しく育ってくれてたらいいなぁ・・・。」
そんな気持ちを踏みにじるかのようにオールバックの男は催促する。
「早くしろ。もうこの男は諦めている。躊躇う理由がどこにある?」
「どうしてもこの人は掃除しなくてはいけないんですか?この国の害になるとは考えられない。」
「前も言ったよな?害になる、ならないなどどうだっていいんだ。人が多いから優先順位が低い順に掃除する。合理的だろう。」
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