桃花祝願

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 翌日、子玉は弟たちを青郁に会わせることにした。ちょうど彼女が非番だったためである。  外庭で待っていた弟たち~今日は負商は一緒ではない~は、青郁の姿を見た途端、文字通り固まってしまった。子玉も同じだったので微笑してしまった。自分たちの住んでいる村には、こんな美しい人はいないのだから。  子玉たちは、昨日の屋舎に行った。青郁と向かい合って座った二人の弟は、緊張しきっていて自分の名前を告げるのがやっとだった。青郁は二人に、いろいろ話し掛け、彼らが都にいる間に、子玉と一緒に文字を教えるということになった。そして、彼らの滞在中、取り敢えず諺文(ハングル)だけは全て覚えさせた。  季節は移り変わり、何度目かの夏のことである。 「このところ暑いわね」  仕事を終えた青郁が汗を拭いながら部屋に入ってきた。 「お帰りなさいませ」 と言いながら、子玉はいつものように着替えを手伝った。 「碧香さまも明日は非番ですよね」 部屋の中では二人だけなので互いに真名で呼び合う。 「そうだけど」 「私も非番なので、一緒に裏の山に行きましょう」 「この暑い中を?」 「涼しい処を見つけたのです」 「それは楽しみだわ」  翌朝、二人は大妃殿の一番奥に向かった。周囲には建物が見られなくなり、地面は少しづつ高くなっていった。だが、そこはまだ〝山〟では無かった。やがて、前方に森が見えてきた。二人はそのまま中へ入っていった。暫く行くと木々がまばらになり目の前が開けた。 「こんなところに湖が」 青郁は思わず、声を出した。 「きれいでしょう。この間偶然見つけたのです」 殿中で使う薬草を採りに来た際、ここまで来てしまったそうだ。  二人は湖に近付き、水に手をいれた。そして、暗黙で諒解したように衣服を脱いで湖に入っていった。思ったとおり、それほど深くも無く、水温もちょうど良かった。二人は子供のように水中に潜ったり、水を掛け合ったりしてはしゃいだ。もし、この様子を見る者がいたら、金剛山に降りた仙女たちが水浴びをしている光景を彷彿するであろう。  
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