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「光也くん、元気になったかな……」
楓が自分の正体に気づいてからというものの、時の流れは早かった。彼女が途方に暮れていると、春香がやって来て光也を背負い、二人は早々に帰った。
ーー寂しい……寂しいよ…………。
オレンジ色に染まった川の近くに座り、隣を見る。けれど、そこには誰もいない。ここ数週間で慣れ親しんだ姿がいない……それだけでーー。
いなくなってから、気づいた。自分が光也に抱くこの想いが何なのか……。
ーー私は……いつの間にか、光也くんに恋していたんだ。
「…………このまま、光也くんとは、さよなら、なのかな……」
ーー約束、破っちゃったもんね。
彼は初めから楓が幽霊だと知っていたのだろう。だから、それを自覚してない自分に触るなと言った。一見冷たく見えるけど、彼は優しいから……。
「誰と誰がサヨナラなんだ?」
「……っ」
にじみ出た涙が頬をつたい、地面へ落ちる。逆光で顔が見えなくとも、声だけで誰かなんて分かる。
「光也……くん…………」
「バカエデ。僕は黙っていなくなったりしない」
仏頂面で眉間にシワを寄せる光也を見て、自然と笑みがこぼれた。
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