2人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、彼ーー光也は楓に全てを話した。自分がこの川原に来たのは偶然ではないこと、祓い屋の後継ぎであること、初めての仕事であること……色々だ。
「……でも。お前と話す度に分からなくなった。ただ、祓うだけで良いのか……」
「光也くん……」
時折切なそうな瞳で見られたのは、そういうことなのかと腑に落ちる。隣で震える肩を抱きしめたい。そう思って手を伸ばすも、楓はその手を静かに下ろす。愛想はないけど、優しい彼に自分が出来ることは何かないのかーー、頭を悩ませ一つの答えにたどり着く。
「ねぇ……光也くん。私を祓ってよ」
「おまっ……何、言って……っ」
「私に気づいてくれた、側にいてくれた……それだけで、もう、十分だよ」
これは、最初で最期の嘘。本当は、もっと側にいたい、想いを告げたい、あなたに……触れたい。でも、そしたら彼をずっとここに縛りつけてしまう。それだけは嫌だからーー。
「………………分かっ、た。千明、目を閉じて」
「うん」
最期は笑顔で。笑った顔を覚えていてほしいからーー。
「千明楓、天へと還り給へーー来世でまた合間見えよう……おやすみ」
楓の体はふわりと温かくなり、意識がどんどん薄れゆく。頭によぎるは、光也と過ごした思い出ばかり。
来世までなんて、大人しく待ってられない。
「私はひとまわりしたら、ここに来るよ。絶対」
そう言って微笑むと、頭が視界が真っ白な光に包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!