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ひとまわり
茜色に染まった空、流れる川、風に揺れる彼岸花に秋を感じる。
「あれから十二年……時が経つのは早いな」
光也が楓を祓ってから、それだけの時が過ぎた。
この季節になると、光也は決まって楓と出逢った場所ーー川原に向かう。成人し大人になった今でもだ。目を閉じると思い浮かぶは、彼女のまばゆい笑顔ばかり。
出逢った当初、彼女が纏っていた邪気は会う度に薄まった。今思えば、悪霊になる寸前だったかもしれない。
ーー千明を祓ったのに悔いは、ない……けどーー。
「もう一度……会いたい」
会って、話して、彼女の笑顔が見たい。そして、あの時には叶わなかった……触れたいという思いを叶えたい。拳をきつく握り俯きながら川辺を睨む。
「君、そんなところで何してるの?」
その声に光也は耳を疑う。
ーー嘘……だろ。
「ねぇ、君に聞いてるんだけど……無視?」
くすくす笑いながら隣に並んだその人はーー。出逢った時にーー自分が現れたあの場面を再現していると思いあたると、光也は思い切ってそちらを向く。
「久しぶり、光也くん」
「……………………ちあ、き」
十二年待ち望んだ彼女はセーラー服を着ていた。
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