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「えへへ、驚いたっ?光也くんは来世でって言ったけど、待てなくてすぐに生まれ変わっちゃった!」
無邪気に笑う楓を見て、光也はわななく。
「バカエデ。本当に君は馬鹿だな。僕だって……」
皮肉はすらすらと口から出るのに、本当に言いたいことは口にできない。
ーーああ、もうっ。どうにでもなれっ!
突如黙りこむ彼を不思議に思い、彼女は話しかける。
「どうしたの?光也くーーわわっ」
楓が驚くのも無理はない。何故ならーー。
ーー私、み、み、光也、くんに抱きしめられてる~~っ!
彼が強く自分を抱きしめているのだから。
ーーやっと、触れられた……。
この腕の中に収まる華奢な身体に、確かに感じる温もりにほっとし、知らず知らず呟いていた。
「僕だって楓に会いたかった」
「光也くん……それって、つまりーー」
己の失態に気づくと、光也は慌てて楓の様子を窺う。その瞳は熱っぽく頬も微かに上気している。恥ずかしくなって、彼女の耳元に唇を寄せる。
「そう。僕は君のことがーー」
風がさわさわ二人の間を通り過ぎ、夕陽は彼らを柔らかく照らす。ひとまわりーー十二年。長い時の隔たりが二人の絆を崩すことはなかったそうだ。
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