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「やっぱり、この花キレイだなぁ」
楓は川原に咲いていた風で揺れる彼岸花を、じっと見つめる。
ーー私の名前の『楓』と同じような色してるしね。
『楓』とは秋の紅葉で見かける、世間ではよく『もみじ』と呼ばれる種類の紅い葉っぱだ。彼女はその花に手を伸ばす。
「千明、変わってるね。その花好きなの?」
「あっ、光也くん。今日は早いね」
あと少しで手が彼岸花に届きそうなところで、光也に声を掛けられた。
彼はため息を吐き、物言いたげな視線を自分に向ける。
「あっ……と、うん好きだよ彼岸花。楓と似た色だから親近感わいちゃって」
「ふ~~ん……まぁ、僕も好きだけどさ。別名は嫌いかな」
そう言って彼は楓の隣にしゃがむ。
「別名って?」
「他にも名前があるってこと。捨子花や忌子花とか……根に毒を持ってるのが関係してるか分からないけど」
「へぇ、そうなんだ。物知りだね」
感心して光也に微笑むと、そっぽを向かれる。
「別に。そんなことない。あれ、春香からLINE来てる」
ポケットからスマホを取り出し、彼は誰から来たのか分かるなり頬を緩ませた。
ーー光也くんのあんな顔見たことない……はるかって彼にとってどんな存在なんだろう……。
胸がずきずきと痛みだし、楓は胸を押さえる。この気持ちに気づいたら、今までみたいに会えない。そう感じて唇をきつく噛みしめた。
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