夕暮れ時に

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その日の夕方は、いつもと違った。楓が部活終わりの光也を待ち、彼が来ると川の近くの草原に座り談笑する。そうしているとーー。 「あれ、光也?珍しいね、あんたがこっちの方から帰るなんて……」 「春香……」 ーーはるかって、この前のLINEの相手だったっけ……? こちらに近づいてくる少女は、髪を下の方で二つにくくり、赤いリボンが結ばれたブレザーを着ていた。 「…………ん?光也の隣にいるアンタ、誰?」 「あ……えっと、私は千明楓。あなたが、はるかさん?」 「うん、あたしは桜木春香。春の香りで春香……何でカエデがあたしの名前知ってるの?」 眉間にシワを寄せる春香に、楓は光也から話を聞いたことがあると言うと納得した。 「そうだったんだ!あ、ちなみに光也はあたしの彼氏だから奪らないでね?」 口を弧に描く彼女を見て、心臓がどくりと嫌な音を奏でる。 「お前の彼氏になった覚えはない。ただの腐れ縁だ」 光也は仏頂面で春香にそう言い放つ。瞬間、彼女の顔は曇り、ぱっと笑顔を浮かべ幼馴染みって言ってよ、と肘で彼を突く。 その光景をぼんやりと楓は眺め、春香は光也に好意を持っていると直感した。そして、何よりーー。 「春香ちゃんは光也くんに触れて良いんだ……」 「千明。今、何か言った?」 「…………ううん、何にも言ってないよ」
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