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この頃、楓は光也と二人で過ごす時間が少なくなった。それはーー。
「光也っ、カエデ。ま~~た二人でここ?飽きない?」
二人の座る間に割り込んできた人物ーー春香の存在 が大きい。彼女がいると、光也にべたべた触れて時折見せつけるかのように得意げに笑うのだ。
ーーそんなに敵対心持たなくても、光也くんのことそんな風に見てないのになぁ……。
ため息をつき空を見上げる。今日は曇ってて夕焼けを見れない。
「恋人でもないのに、あんまべたべたするなって!離せっ」
「わっ、もう……照れてるの?光也可愛いっ」
そんなやり取りが耳に入り、楓は夫婦漫才かと思う。
ちらりと二人を視界に入れると、本当に嫌そうな顔をする光也にくすくす笑う春香の姿。
「そんなに仲良いなら付き合っちゃえば良いのに」
ーーあ、しまったっ。
慌てて口を閉ざすも、もう遅い。楓の言葉に彼はすかさず反発する。
「春香は友達だって言ってるだろ!それに僕が好きなのはーー」
「「好きなのは?」」
「…………っ、だ、誰だって良いだろっ、帰るっっ」
耳を真っ赤にして、光也は二人に背を向けずかずかと歩き出す。
それから、後日の事だ。彼が楓に自分に触れるなと言った理由が分かるのはーー。
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