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「ロン!」
上家(カミチャ)、即ち左隣の克(かつ)君(くん)の捨て牌を見て俺は自分の手を倒した。
「千三百点だよ」
俺が点数を告げると
「なんだ、安くて助かった」
ホッとしたように丸顔で童顔の克君は俺に点棒を払った。麻雀の点数は最低が千点だから確かに安い。
「井本君、渋いなあ」
「圭兄さん、上手いね」
所長の息子の正樹さんが眼鏡を直しながら俺を苗字で呼び、茶髪で少し長髪の岸田さんが下の名前に『兄さん』を付けて呼ぶが……その『兄さん』には少し嫌な響きを感じた。ちょっと心配事が想起されたのだった。
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