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「旅人です。」
「……………は?」
あたしは思わず、この場にそぐわない品のない声を出してしまう。
「は……? タビビト?」
「ええ。旅をする人と書いて、旅人です」
「いや、それは分かりますけど」
ーーーこいつ、あたしのこと馬鹿にしてんじゃないでしょうね。
かなりムカついてきた。
けど、あたしは一人前の大人らしく、精一杯の笑みを顔面に貼り付けて、寅吉に問いかけた。
「あのー………旅人だと、収入、ありませんよね。旅人の他にも、なにか、お仕事されてるんじゃないですか?」
すると寅吉は、うーん、といった様子で、何かを思い出すように斜め上の天井を見つめた。
「……………」
「……………」
「……………」
しばらく沈黙が続く。
ああ、無言で向かい合う、白い柔道着の男と、ピンクのてろてろワンピースの女。
………面白すぎるでしょ。
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