憂鬱なソネット

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この現代日本に、お日様の光で目覚めて、腹時計で時間を判断している人間が生息していたとは。 なんだか気が抜けてしまって、怒る気にもならなかった。 「………まぁ、とりあえず、事情は分かりましたから。とりあえず、土下座はやめてください。なんかこっちが申し訳なくなるし」 あたしは寅吉の前にしゃがみこんで、そう声をかけた。 寅吉が顔を上げる。 そして、あたしの顔を見てから、すーっと足下まで視線を下ろしていく。 どうやら、あたしの服装を観察しているらしい。 「…………その服は、あやめさんの好みじゃないってことですか」 「は?」 急に話題が変わったので、あたしは眉をひそめる。 すると寅吉は、いきなり手を伸ばしてきて、あたしのワンピースの裾をぐいっとつかんだ。 わぉ、なにすんの、このひと!! あたしは驚いて硬直する。 寅吉はてろてろワンピの裾を、両手でさわさわと触った。 「たしかに、着心地の悪そうな生地ですねぇ」 「………うん、まぁね」 「それに、そんな細い支えしかない靴、バランスがとれないだろうから、転んだら危ない」 「ピンヒールのこと? たしかに歩きにくいけど。爪先に体重かかって痛くなるし」 あたしが正直に答えると、寅吉は再び顔を上げた。
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