憂鬱なソネット

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さて、いま何時かな、と腕時計に視線を落として、あたしは目を疑った。 「………うそ」 いつの間にか、待ち合わせ時間を大幅に過ぎていたのだ。 ーーーーーちょっとちょっと!! 相手、いったいどんな男なわけ!? お見合いに遅れてくるとか、最低じゃない!? あたしなんか、低血圧なのに朝5時に叩き起こされて。 眠い目をこすりつつ着心地の悪い服着せられて。 家から二時間もかかる美容院に行って、さらに二時間以上イスにしばりつけられたままヘアメイクしてもらって。(生き地獄!) 慣れないハイヒールで足指の痛みと戦いながら歩いて。 遅刻したら印象わるいって言われてたから、待ち合わせの30分前に着いてたんですけど!? もし万が一なにかのっぴきならない事情で遅れるにしてもさ、電話とかで連絡するのが当然でしょ!! こっちのケータイの番号とアドレスは向こうにも教えてあるんだから!! もー、ほんっと信じらんない!! こりゃもう、どんな男が来ても、たとえめちゃくちゃイケメンで超お金持ちでも、無いわ。 ぜったいお断りだわ。 高級ホテルのラウンジの片隅で、一杯1000円のカフェオレを飲みつつ怒りを噛み殺していると。 ーーーざわざわっ 突然、入り口に近い席のあたりから、遠慮がちながらも隠しきれないざわめきが起こった。
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