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で、その変人さんは、男らしく自分が会話をリードしよう、なんて気も、もちろんないらしく。
猫背の背中をさらに丸めて、黙ってのそっと座っている。
そんな常識、通用しないってことですか。
まぁ、柔道着を着てる時点で、そんな期待はさらさらしてませんが。
寅吉は真っ白な柔道着に身を包み、相変わらずあたしのほうをじーっと凝視している。
………あれ??
顔だけ見ると、意外とイケてるかもしれない。
彫りの深い顔立ちで、切れ長の目に高い鼻、薄くて形のいい唇。
でも、いかんせん顔から下が………
ほのかに漂うイケメン的可能性を全てかき消してしまうような、絶対的な変人オーラ。
………あーっ、気になる!
やっぱ気になるよ、柔道着!
いくらなんでも、スルーできない!!
あたしは勇気を出して、訊いてみることにした。
「あのー……寅吉さん。なんで柔道着なんですか?」
我ながら勇者である。
『これが普段着なんです』とかいう途方もない答えが返ってくるかもしれないのに、よく訊けた!!
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