第一章

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「ごめんね。私、お弁当持ってきてるから……」 「あぁ、そうでしたか……」 知ってるくせに、誘ってくるし……。 別に、寿司が嫌いなわけではない。 むしろ、好きなほうだ。 いや、もっと言えば大好物に違いない。 だけど……。しばらくは、食べる気が起きなかった。 それというのも、実家が寿司屋だったのは別にして、「あの日」の記憶だけは三十路に なった今でも、わたしを悩ませるものだった。 いわゆるトラウマというものかもしれない。
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