第一章

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小さな家だったので、店舗の二階は私だけのスペースだが、両親は店舗の奥にあった 四畳半を、夫婦の寝室としていたのだ。 ある日、私が出かけた後に、忘れ物を取りに自宅に戻ったことがあった。 裏口からその四畳半の前を通って二階に上がろうとした時に、男女が交わるノイズが 微かに聞こえてきた。 そう、母は米川と密会を交わしていたのだ。 もちろん、ドアを開けて現場を見たわけではないが、リアルにその状況が想像できた。 たしかに、四十代の若さで寂しかったのは理解できるが、よりによってあの海坊主と 関係してたことがショックだった。 父が亡くなって、一周忌も経っていないのに……。
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