第一章

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ところが、母は顔色も以前にくらべて良くなり、服装や化粧にも気を使うようになった。 間違いなく、海坊主との関係が母を再び女に変身させていたのだ。 それからは、母との会話は出来るだけ避けるようにした。 というより、すでに成人した娘を気遣うより海坊主との情事に溺れているかのように 確実に、女の顔になっていたからだ。 その後、就職が決まると卒業と同時に、母には適当な理由をつけて家を出た。 十年以上経った今でも、「あの日」に聞いたノイズが脳裏に焼きついて離れないのだ。 しかも、睡眠中も見てもいないのにその時の映像が夢の中ではリアルに再現されることも 珍しいことではなかった。 そんなことを想像するなんて、わたしの中にも母と同じような厭らしい女の顔を 持っているのだろうか。
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