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「陛下は古の三皇五帝すら凌ぐ、神に等しい御方であらせられるのですから」
方士の言わんとすることを悟って、皆が言葉を失った。
始皇帝は自らを三皇五帝を超えた万物の主宰者、つまり神に等しい存在であるとして、中原で初めて「皇」の帝を名乗った。
その皇帝が太歳を食し、万が一にも膳夫の二の舞となるようなことが起きたら。それは皇帝が膳夫と同格の人間だったということを意味する。
間が悪いことに、ここまで膳立てが整ってしまった。
徐福に莫大な財を与え、八年という歳月をかけた、皇帝の悲願を叶える一世一代の御宴。
家臣や食官だけだったなら、まだ口封じも出来たかもしれない。
しかしこれほどまでに絢爛な宴を開き、大勢の国賓や使者を招いてしまった。ここにいるほとんどの者が、昨日の謁見で太歳の神秘を目の当たりにしている。
この衆人環視の中、自らを神と称した皇帝自身が太歳を拒めば、それは死の恐怖に屈したということだ。
一度潰れた面子は、二度と元に戻らない。
どちらに転んでも、皇帝の権威は失墜を免れない。そこまで考えて、李斯は慄然とした。
(まさかこやつ、それを目的で……?)
「どうなさいました?」
両脇を固めていた衛士は、困惑しつつも方士の出方を窺っている。
「いずれにせよ、太歳は至上の美味だそうですよ。お召し上がりにならないのですか?」
挑発するような方士の言葉に、皇帝の額に青筋が浮き上がる。
「それともまた別の者に、別の不老不死の霊薬を用意させますか?」
「……陛下!!」
ここで殺されても、皇帝を止めなくてはならない――――年老いた丞相は死すら覚悟し、声を張り上げた。
「このような者の言に、お耳を貸されてはなりませぬ!」
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