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「…忌まわしきかな、悲しきかな。
ソナタに迫り来る闇は、執拗にソナタを求めやる……」
黒い髪に黒い瞳の少年が、誰かに声をかけられたのか後ろの方を振り向く。
ソノ顔には、柔らかな笑顔が在った。
「悲しきかな…、悲しいことかな…。
ソナタの笑顔は、ソナタの心の傷からも生まれやる……。
嗚呼、ミストルァルタ……、なんと悲しいことか。
ソナタの悲しみを、見るのはなんと心が辛いことか……。
ミストルァルタ──」
アルトリアが指に白銀に煌めく蝶を乗せて、そっと口付ける。
すると白銀に煌めく蝶は煙たなびかせるいかめしくも美しい白い大きな狗へと姿を変え、泉の中へと勢いよく飛び込んだ。
「嗚呼…、それでもソナタは…、こんなにもあまねく全てに愛されておるのだな、ミストルァルタ…」
「……っぁあ…っ!
アルトリア様、アルトリア様っ!
今のは神々ノ使者──狛犬では…?」
落ち着いて愛おしそうに、それでいて辛そうに言うアルトリアの後ろで、
濃い色合いのドレスの女性が驚いたように言葉を発する。
ソレにアルトリアは手を広げ、高らかに声を挙げて言った。
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