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数日後、ふらっと店に現れた赤澤さんは、カウンターで飲んでいる。
「なぁ…マスター。」
「はい。」
「俺のさ…元カノな…亡くなったんだってさ…。」
「えっ…。」
知ってるよ。
「俺ね…フラれたんだけどさ…そのままで良かったのに…なのにさ…。」
「赤澤さん?大丈夫ですか?」
「なぁ…何でさ…死んだ奴の事、悪く言うのかな…。」
何を言いたいのか、わかっていた。依頼に細かく悪行が書かれていたから。依頼を受ける時、特に理由を聞くことはしていないが、勝手に恨み辛みを書いてくるんだ。今回もそのパターンだった。
「赤澤さん。どうぞ。」
スコッチのロックを赤澤さんに出した。僕の顔を見ると、悲しげに笑ってお礼を言った。
「ありがとう…マスター。」
カランと氷が鳴った。
「俺ね…知りたくなかったんだ…。最低な女だなんて思いたくなかった…。」
「優しいんですね。赤澤さんは。」
「優しい?…ふっ…違うね。俺はね、自分が傷つきたくないの…。」
この人は、元彼女を本気で好きだったのだろうか…。なぜ、こんなに苛立っているのか…僕にはわからなかった。
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