第1章

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数日後、ふらっと店に現れた赤澤さんは、カウンターで飲んでいる。 「なぁ…マスター。」 「はい。」 「俺のさ…元カノな…亡くなったんだってさ…。」 「えっ…。」 知ってるよ。 「俺ね…フラれたんだけどさ…そのままで良かったのに…なのにさ…。」 「赤澤さん?大丈夫ですか?」 「なぁ…何でさ…死んだ奴の事、悪く言うのかな…。」 何を言いたいのか、わかっていた。依頼に細かく悪行が書かれていたから。依頼を受ける時、特に理由を聞くことはしていないが、勝手に恨み辛みを書いてくるんだ。今回もそのパターンだった。 「赤澤さん。どうぞ。」 スコッチのロックを赤澤さんに出した。僕の顔を見ると、悲しげに笑ってお礼を言った。 「ありがとう…マスター。」 カランと氷が鳴った。 「俺ね…知りたくなかったんだ…。最低な女だなんて思いたくなかった…。」 「優しいんですね。赤澤さんは。」 「優しい?…ふっ…違うね。俺はね、自分が傷つきたくないの…。」 この人は、元彼女を本気で好きだったのだろうか…。なぜ、こんなに苛立っているのか…僕にはわからなかった。
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