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「あら、どうして」
「だって、大学に入ってもこれといった目標があるわけでもないし、これから四年間もなにをしたらいいのかしら」
「それはそうかもしれないわね」
「美由紀の場合は看護学部だから専門性もあるけど、私なんか文学部でしょう、なんのとりえもないわ」
「そうね、でも私も将来、病院勤めをする気もないのよ」
「じゃあ、卒業したらどうするの」
「そうね、早いとこ結婚でもしちゃおうかしら」
「そうなの、そういえば美由紀のお父さんって有名な教授でしょう、いいお見合いの相手なんか紹介されるんでしょう、羨ましいわ」
「まあ、そんなことないわ、父は研究ばかりしていて、まるで世間知らずで、周りからは専門ばかって言われるみたいなの」
「あら、そうなの、でもやっぱりいろいろいいチャンスがありそう、うちなんかただのサリーマンだから」
「卒業したらどうするの、就職するの」
「うーん、でも文学部じゃ難しいし、結婚でもしようかな」
「まあ、それじゃ夢がないわね」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
キャンパスの並木は、柔らかな陽射を浴びて緑に輝き始めていた。
行き交う学生は笑顔に溢れ、交わす会話も愉しげに見えた。
「ねえ、合コンに行かない」
「えっ、そんなのがあるの、うちの学部ではそんな話聞かないわ」
「理系は忙しいからじゃないの、こんどの金曜よ、行きましょうよ」
「そうね、行ってみようかしら」
退屈紛れにいいかと思い、美由紀は軽い気持で頷いた。
それから彼女は、久美子に誘われるままに何回か合コンに参加した。活発な久美子は選り好んだ何人かの相手と交際を始めた。しかし、美由紀は眼にとまる相手には行き逢うことはなかった。輝くような半透明の美しい肌に魅せられて近づく男性は数多く現れたが、彼女が彼らに心惹かれることはなかった。そんなことが度重なり、やがて彼女は合コンからは遠のいていった。
チャンスがないわけではない、合コンを通しても多くの男性を見てきたのに、彼らに魅力を感じないのはなぜだろう。身ぎれいで、なかにはファッショナブルで、ルックスもいい男もちらほらいたのに心を射抜かれるような疼痛を感じる場面はなかった。彼らにはなにかが足りない、そう彼女は感じていた。
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