セリ1

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 眩む光。それから? 声。順番は、たぶん。蓋が開いたんだというのはだいぶたってから。マーナが泣きながら抱きついてきたので、外にいるって気がついた。  その光がササヅキのランタンだとわかったのは次の村に着いて状況を説明するよう求められてから。自分の手も見えない箱の中で、かすかに隣のすすり泣きやノックの音だけが意識を戻した。真っ暗で、吸い口のついた水袋だけ掴んでた。水だけで、でもそこまで衰弱してなかったのでたぶん3~4日のことだろうって言われたし、きっとそうだと思う。だけどそのあいだ膝を抱えて箱の中で、しゃべることも排泄を我慢することもできなくて早くに意識は飛んでたと思う。―――自分の境遇について積極的に考えたい待遇じゃなかったからね。  あたしが生まれる前から戦争が続くこの国では、『うまくやった人』と『搾取されるだけの人』の貧富差が地域差で定着していて、あたしの村はもちろん後者。口減らしに女工として雇われていったのは村でもあたしの他に5人はいた。マーナ以外の子がどうなったのか、たぶん予定通り紡績工場に行ったと思う。あたしとマーナだけこうなった理由はあとでわかった。工場に着く前に分けられて仲介人が変わったのを見たのが最後の光景だ。 
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