1 反抗するより弾き語り

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 北には世界でも最高峰の山脈が連なり、南側には遠浅の海岸が広がるドビスビッチェ国。 その最南端にある海沿いの小さな町パプスペリア。 一年を通して、晴れ渡った空が多く、心地よい潮風が気持ち良い町である。 この町に一人の吟遊詩人の姿があった。 吟遊詩人の名はマサヴィル。 町に流れる小川の畔でマサヴィルはギターを爪弾きながら、遠くを眺めていた。 そんなマサヴィルに、この町一番の荒くれ者であるキズカが、息使いを荒くし近づいてくる。 「おい吟遊詩人!」 キズカは剣を握りしめ、マサヴィルを睨む。 「俺にはマサヴィルって名があるんだが」 睨まれる理由に心当たりはあったが、マサヴィルは面倒臭そうに首を傾げ、キズカを見た。 なめ切った態度のマサヴィルと目が合ったキズカは、更に興奮し剣先を向けた。 「ふざけた態度だなオイ!今日こそやってやる!」 「はぁぁ・・・やれやれ昨日の報復だな。にしても真っ昼間から剣先を人に突きつける・・・物騒だなぁ」 見た目は、疑いようのない脆弱な体つきであり、虚弱体質そうな顔色をしているマサヴィル。 そんな男が、突きつけられた剣先を指先一つで、いとも簡単に払いのける。 当たり前のことのようにやってのけた後は、またもギターを弾き始める。 これだけで、マサヴィルが並の人間ではないことが分かるのだが、キズカは引くに引けなかった。 「う、うるさい!剣士が通用しないという言葉、撤回してもらうぞ!」 先日も同じ事が起こっていた。 剣士という職業が、この先通用しないとマサヴィルが言ったのが事の発端だ。 剣士を志す見習い剣士のキズカには我慢ならない言葉であった。 「何だよ。諦めてないのか?」 「当たり前だ!昨日は、暗くてよく見えなかっただけだ」 「ま、昨日は夜中だったから、見えにくくて当然だが、剣士として、その言い訳は惨め・・・」 「ぶつぶつ言うな。構えろ吟遊詩人!」
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