1 反抗するより弾き語り

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再度、構え直し切っ先をマサヴィルに向け威嚇するキズカ。 その荒々しい行為も、マサヴィルにしてみれば面倒臭いだけ。 やれやれとマサヴィルは首を振り、大げさに態度に出している。 「いい加減に名前を呼べよ。職業名で呼ぶなって」 「うるせぇっ!余裕ぶっこいてんじゃねぇ!構えろ!決着つけてやる!」 「やれやれやれやれ。お前が勝てるなど万に一つもない。それでもいいのか?」 立ち上がり、キズカと対峙するマサヴィル。 平穏な村だけに、この手の騒ぎは直ぐに知れ渡った。 マサヴィルとキズカの周りは瞬く間に野次馬で溢れかえった。 「おい!みんなこっち!キズカが喧嘩だってよ!」 「どこの馬鹿だ?キズカに喧嘩売るなんて・・・」 「いや、キズカから喧嘩売ったらしいぞ」 「ほう。そりゃ見物だ」 喧嘩であれば負けなしのキズカであったが、自分から喧嘩を売ることは滅多になかったため、町中 の人がキズカとマサヴィルを取り囲む。 「逃げるなら今だぞ~♪剣士さ~ん♪」 「剣士は敵を前に逃げたりしない!俺はお前を斬る!」 「無理だって~♪止めとけよ~ぉぉぉ~♪」 「ふざけるな!」 そう言われ、歌うのをやめ、真顔でキズカに言うマサヴィル。 「剣士っていっても、見習いだろ?お前は剣士のレベルにない」 「なんだとコラ!なんでそう言い切れる?」 「昨日の動き。それから、その構え・・・」 「なんだよ?」 キズカの質問に歌で答えるマサヴィル。 「素人のほうがマシだぁ♪」 殺気に満ちたキズカとは対照的に、小馬鹿にするようにギターを奏でているマサヴィル。公衆の面 前で辱められたと感じたキズカは、顔を真っ赤にしてマサヴィルを睨む。 「う、うるせぇっ!」 「見習い剣士のお前が、いくら意気込んでも結果は知れている」
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