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上から目線で言うマサヴィルの態度が、一層キズカを刺激する。
「無理なもんか!俺だってやれるっ!昨日は油断しただけだ!」
興奮するキズカに合わせることなく、面倒くさそうに首を横に振った。
「ふ~。やれやれだ。そこまで言うなら相手してやる。来いよ」
そう言われ、突進するキズカだが、ギターを片手にのらりくらりしているマサヴィルを捕らえることが
出来ない。
殺気で満ちたキズカに対しても、飄々とし、簡単に背後を取った。
「はい。おしま~い♪実戦なら死んでんぞ~♪」
「く!ばかなっ!」
背後からキズカの肩をポンポンと軽くたたくマサヴィル。
「残念・・・だけど、これが現実だ」
それだけ言うと、再び小川のほとりに座り、何事もなかったかのようにギターを爪弾くマサヴィル。
予想外のあっけない幕切れに、野次馬連中は、どよめいた。
「おい、見たか!あのキズカが何にも出来なかったぞ!」
「てか、見えたのか?キズカの剣も、恐ろしく速かったぞ」
「誰だよ、あいつ?」
キズカの圧勝という人々の予想を裏切る結果に、野次馬もしばらくはマサヴィルを見ていたが、キ
ズカの手前、誰も声をかけられない。
茫然と立ち尽くしているキズカの八つ当たりを怖がり、野次馬達は程なくして散って行った。
「おい。突っ立ってないで、こっち来て座れよ」
桁違いの実力差に呆然とするキズカを自分の横へ座るようマサヴィル促した。
マサヴィルの言葉に素直に従い、隣に座り、その途端、キズカはマサヴィルに詰め寄る。
「だいたい何で吟遊詩人のお前が、そんなに強いんだよ!反則だ!インチキだ!」
「ちょ!近い!唾つばツバっ!ったく汚ねぇなぁ!反則もクソもないだろ。元々、俺は侍だったんだ
から、それなりの力はあるんだよ」
唾で塗れた顔を拭きながら、自分の武力を説明するマサヴィル。
「さ、侍だと!?最上級職じゃねーか!」
剣士としての実力は然程ではないが、武人の職業に詳しいキズカは、信じられないと目を見開いた。
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