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12月に入っても、ゲンタは学校に来なかった。
ヒロシママの提案で、近所の友達が何度か誘いに行ったが、ゲンタは家から出ようとしなかった。
きっともう、このまま6年生を終えるのだろう。
私はそう思っていた。
ある日の夜、寝る前に、リョウは私に1枚の紙を差し出した。
そこには、子どもの字で「クリスマス会」と書かれていた。
どうやら、ヒロシの家でクリスマス会を行うらしい。
「楽しそうね。参加させてもらったら」
リョウはうん、と頷いた。
しかし、表情は硬く、まだ何か言いたげに唇を動かしている。
「どうしたの」
優しく訊くと、リョウは意を決したように口を開いた。
「あのね、お母さん。明日、ヒロシと一緒にゲンタを誘いに行こうと思うんだ」
「……そう」
急に笑顔を作ることはできなかった。
明らかに落胆した顔から、口の端を強引に吊り上げることには成功した。
リョウは眉を下げ、寂しそうに尋ねた。
「お母さん、ゲンタのこと嫌い?」
「嫌いというか……」
私は言葉に詰まった。
リョウを傷つけたくないが、嫌いじゃないよと嘘をつくことが、正解とも思えなかった。
迷ったあげく、何度も口にしている話を持ち出した。
「何度も言ってるけど、お母さんね、自分の行動や言動は、いずれ自分に返ってくると思うの。人にひどいことをすれば、自分もひどい目に合うし、善いことをすれば、困った時に助けてもらえたりする。
ゲンタは、リョウや他の子をいじめてたでしょ? だから、今は不登校という形で苦しんでるんじゃないかな。お母さん、それは仕方がないと思ってる」
言い終えると、リョウは不安そうに私を見上げた。
「じゃあ、僕も不登校になっちゃうのかな」
ボソッと出た言葉に、私はドキリとした。
「え?」と聞き返すと、リョウは苦しげに顔を歪めた。
「ゲンタが不登校になったの、僕のせいなんだ。僕が、学校を休んだらいいじゃん、って言ったから……」
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