いじめと本音

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ゲンタがリョウをいじめるようになったのは、4年生の6月頃からだった。 私たち家族は、その年の3月、春休みの間に学区内で引っ越しをした。 リョウもそろそろひとり部屋が欲しいだろうと、中古のマンションを購入したのだ。 学校までの距離は遠くなったが、自分の部屋を持てた息子は、とても喜んでいた。 新しい登校班も、顔を知っている子がほとんどだったから、すぐに馴染むことができた。 同じ班にいる同学年の男の子は、ヒロシとゲンタのふたり。 ヒロシとは1、2年生の時に同じクラスだったので私も知っているし、ゲンタはヒロシと仲がいいので、リョウは学校で何度か一緒に遊んだことがあるらしい。 4月、始業式の日に登校班の集合場所へ行くと、ゲンタがハキハキとした口調で挨拶をしてくれた。 人懐こくて礼儀正しい子。それが、ゲンタの印象だった。 一週間の集団登校の期間が過ぎても、ゲンタはヒロシを連れて、「一緒に行こう」とリョウを誘いに来てくれた。 3人は気が合ったのか、やがて放課後も一緒に遊ぶようになった。 引っ越しをしてから、リョウはとても楽しそうにしていた。 あっという間に近所に仲のよい友達ができて、私はホッとしていた。 だが、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。 2ヶ月ほどすると、リョウは肩を落として帰宅するようになってしまったのだ。
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