いじめと本音

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何があったのか訊いても、リョウはなかなか話してくれなかった。 親に言えない悩みを抱えているのだろうか。 明らかに様子がおかしいのに、理由が分からず、私は思い悩んだ。 やがて、どうしても気になり、何度か買い物を装って公園の前を通った。 そんな時は大抵、ゲンタが気づいて笑顔で手を振ってくれた。 だが、息子はいつも、その横で暗い顔をして立っているのだ。 以前なら、ゲンタのようにブンブンと手を振ってくれたのに。 何かある。そう確信しながらも、私は心配でたまらない気持ちを我慢して、見守ることにした。 すると、待っていた甲斐あって、7月のある夜、リョウはようやく打ち明けてくれた。 登下校の際、ゲンタがヒロシにだけ内緒話をしたり、二人で突然走り出して、リョウを置いてけぼりにすること。 放課後に公園で遊んでいる時、リョウだけ仲間に入れてくれないこと。 一緒に遊べても、わざとボールをぶつけられたり、蹴られたりしたこと。 リョウの話を聞いた私は、怒りや悲しみを抱くと共に、あのゲンタがそんなことをするのかと、ひどく驚いた。 いつもニコニコしながら挨拶をしてくれるゲンタ。 家に遊びに来た時も、私が作ったおやつを「おいしい!」と笑顔で食べてくれて、なおかつ誰よりも礼儀正しかった。 耳鼻科で偶然会った時も、ひとりで来ていた彼を褒めると、嬉しそうに目を細めていた。 あの笑顔の裏にそんな顔が隠れているなんて、想像すらできなかった。
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