いじめと本音

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後にヒロシのママから聞いたが、ゲンタは昔から喧嘩が多く、彼にいじめられた子も多いらしい。 リョウが引っ越して来る前は、ケンジという子がターゲットになっていたようだ。 ケンジは今も公園に来るが、ゲンタがいる時は必ず引き返して行くという。 公園で遊んでいる子たちは、誰もゲンタの意地悪を咎めなかった。 ヒロシや他の子も、ゲンタが居ないところでは優しいが、ゲンタがリョウをいじめると、それに追随するという。 要は、ゲンタが怖いのだ。 仕返しを恐れているんだと、リョウは言った。 スポーツが得意でリーダー的な彼を、一目置いている部分もあるのだろう。 ただ、気性が激しく学校でもたびたび喧嘩をするため、先生にはよく叱られているようだった。 リョウに手を出したところを担任に目撃され、廊下に立たされたこともあったらしい。 ゲンタの悪い噂を耳にするたびに、私の頭に、屈託のない笑みを浮かべる人懐こいゲンタの顔が浮かんだ。 信じられない───。 そんな気持ちが強いのは、リョウをいじめている間も、ゲンタの私に対する態度が全く変わらなかったからだ。 彼には罪悪感というものがないのだろうか。 それとも、悪いことをしているという自覚すらないのだろうか。 リョウに止められているため、ゲンタを追及することもできず、私はただ、元気に挨拶をする彼に、静かに手を振ることしかできなかった。
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