ハロウィンの呪文

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駅に向かい電車に乗る。 とりあえず途中で誰にも会わなかったことに安堵する。 家までの時間は約30分。 スマホ画面からふと顔を上げたとき、窓の外に見えた駅ホームで幼馴染みで2年の木村日向(キムラ ヒナタ)の姿を見つけた。 ヒナ兄の乗換駅じゃない。確か前も――、 手元でふるえたスマホが思考を途絶えさせる。 ≪ママに少し遅くなるって言っておいて≫ リリ、か。 今日は帰ったら行った店の話を聞かされるんだな。 了解のスタンプを一つ押して画面を閉じる。 すぐに窓の外に目線を戻すと、すでに電車は走り始めていて、先ほど見かけたはずのヒナ兄の姿も見つけることはできなかった。 気のせい?かもな。 最近のリリは部屋にこもらず、前のようにリビングで過ごすことが多くなってる。 俺には言わないがアイツともう会ってないらしい。 アイツとはリリが少し前まで付き合ってた、うちの学園の3年で生徒会長の鈴城來以(スズキ ライ)。 かなりチャラい見かけで興味本位でリリに近づいた男。 リリは父親似のキリッとした美人顔。だけど性格は至って真面目で大人しく超のつくほどの人見知り。 そんなのを知らないで容姿だけで近づいて来た奴らに散々傷つけられてきた。 それを俺は見守るだけしかできないのはもどかしい。 ……あぁ、だから俺もリリに過保護だって言われるのか。
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