ハロウィンの呪文

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ハロウィン用の抜型を両手に持って迷う咲良。 自分で絵を描いて作ってみたものの、画力に難ありで。 見せてもらった画像に写っていたのは、 コウモリはカモメに。 かぼちゃはジャガイモに。 どんな魔法かけたらそうなるのかと疑いたくなるぐらいの残念な出来。 まぁそれも咲良らしいといえるケド。 「今年はリリちゃんにも渡せるからはりきってたのに」 「そういえば子供の時以来か」 「だからできるだけ素敵なものにしたくて」 徒歩圏内の学校と学園。違う学校に通う俺たちは平日に会うことはなくなって。 年が一緒というだけで特別仲良かったわけでもない。 今だからこそ、リリともここまで仲良くなったんだろう。 「懐かしいな……」 その時、子供の時の会話を思い出した。 咲良の作ったご飯に対して、潤季おじさんは手放しで天才だと言い、クルミおばさんはよく出来たと褒めた。 俺は大した言葉もしらずただ「おいしい」と言った。 それを聞いて満面の笑みで俺に向かい 「サクラがユーヤくんに毎日ご飯作ってあげるね」 すべての始まりの言葉。 それが咲良が俺にかけた呪文。
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