ハロウィンの呪文

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テラスの特別メニューはパンプキンスープとコウモリ型のブレッド。 それが付いただけで、後はふつうって手抜きすぎだろう。 「サトシが食べたかったのってコレ?」 「やー、クリスマス並みにスペシャルかなと」 「……スペシャルねぇ」 チキンをフォークで突き刺しながらブツブツ文句を言う智。 こういう喜怒哀楽を素直に出せるとこ、感心する。 項垂れてた智に「ハッピーハロウィン!」と言いながらかぼちゃパイを差し出す女子1名。 智は「お、さんきゅー」と言って嬉しそうにそれを受け取り、ご飯の途中だというのにそのまま食べ始めた。 隣であきれてみていると、「堂地クンも食べる?」と声をかけてきた。どうやら俺の事も知っているらしい。 「あーごめんね、俺甘いの得意じゃなくて」 とりあえず顔は作ってみる。けれど今までとは違い意識的に拒否の言葉をいれる。 残念な顔されるだろうと思っていたら、「あ、そうなんだ。じゃあ他にも配ってくるねー」と言ってあっさり友達のところに戻って行った。 「なに驚いてんだよ、ユーヤ」 智に言われて慌てて食事を再開した。 なるほど。俺は自分で俺という枠を作っていただけ、なのかもしれない。
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