かわいいの呪文

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堂地悠哉(ドウチユウヤ)。 自分の容姿を隠れ蓑に世間をなんとなくうまくかわし続け、この春エスカレーター式の高校に入学した。 母親譲りの黒目がちな目とふわふわしたこげ茶色の髪色。 昔からよく言われたことは「悠哉くんは女の子みたいにかわいいわね」だった。 "かわいい"は女の子にかける呪文であって、男にとっては呪いでしかない。 けれど母親の言う「いつも笑ってれば周りも笑顔になれるのよ」の言葉は俺の中に深く刻まれていた。 おかげで何とも思ってなくてもその顔を作ることができた。 中学まではそれでもよかった。ところが日に日に成長していく自分を見るたび。たぶん呪いが解けかかってる――― 丸顔に近かった顔はだんだんと卵型に。 梨莉と同じぐらいの身長はいつのまにか10センチも差ができたことに。 手だってこんなにゴツゴツして節が目立つようになってきている。 いつまでもかわいいユーヤくんじゃ、いられるわけないよな…… 鏡に映る自分に違和感を感じつつも本来の自分の性格にだんだん近づいてきていることを知る。
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