oneday scene

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僕が勝手に引っ越して来たのは6月に入ったばかりの先週のこと。 マンションの更新時期の少し前から響の家の近くに引っ越しを検討していたものの、なかなか良い物件が見つからなかった。 という言い訳を理由に、僕は強引にここに引っ越して来たのだった。 部屋も広いし、セキュリティも万全、風呂は追い焚き機能も付いているし、宅配ボックスも完備されている。 おまけに、もれなく響とは毎日会える。 僕にとっては快適この上ない暮らしだ。 そして、僕の可愛い彼女は、本当は嬉しいくせに強がっていつもあんな言い方ばっかり。 でも、そんな所も可愛いからつい許してしまう。 「ひーびーきー、ごめんな?怒ってないで出ておいでよ。響の好きなマカロン買ってあるから」 ガチャリと静かに開いた書斎のドア、隙間から眼鏡をかけてる響が見えた。 「…食べる」 「ん、おいで」 両手を広げて待ち構えていると、出てきた響は僕の腕の中に自分からすっぽり収まって顔を擦り寄せてきた。 か、可愛い…。 どうやったって顔が緩んでしまう。 僕はこれでもかってくらい満足な顔で、響をぎゅうっと抱きしめた。
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