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「そういえばさ…今度の日曜日、響の実家行かない?」
「え、なんで?」
「いや、なんでって。一応さ、挨拶しとこうと思って、一緒に住んでる事も言っておいた方がいいじゃん」
「私からお母さんに言っておくからいいよ」
このやり取りをしたのは三度目。
一度目は引っ越してきたその日に、二度目は食事中に話したのだ。
どちらも響の返事は「私から言うよ」の一点張り。
それが、どんな意味なのかは何となく解っている。
響の家はじいちゃんの代から続いてる本田総合病院。
そして響は大事な跡取り娘だ。
やっぱり跡を継ぐとなると、結婚相手は医者を選ばなければいけない運命なのだろうか。
きっと響は、反対される事を恐れて僕との関係を両親に話していないんだと思う。
僕としてみれば、誰に反対されても響と別れる気などさらさらないのだけれど。
「じゃ、今ここで電話して言って」
「え…?あ、明日言っておくから」
「明日するのも今するのも変わらないでしょ」
「え…」
ほら、やっぱり。
顔色の変わった響を黙って眺める。
視線を宙に浮かせて眉毛を下げてる時は、響が困っている時の顔だ。
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