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二人の間に沈黙が落ちると、テレビから楽しそうな笑い声が聞こえて僕は静かにリモコンの電源ボタンを押した。
「ねぇ、響」
「…なぁに」
「もしかして、僕と付き合ってる事、親に話したくない?」
響の肩がビクリと動いて、大きな瞳が揺れた。
「…浩太郎は話したの?」
質問に質問で返してきた様子を見ると、きっと響は両親に話したくないんだろう。
それが何だか少しだけ悲しくもあった。
「僕は話したよ。…でもさ、響が話したくないならそれでいいよ。響は本田総合病院の跡継ぎだし僕とは立場が違う」
これは僕の本音だ。
僕は医者でもなければ取り柄もない、しがないサラリーマン。
響を幸せにしてやれるのか?と聞かれたら自分でも正直解らない。
響は手にしてる食べかけのマカロンを皿に置いて静かにお茶を口にした。
グラスを置いた手がゆっくりと僕の方に伸びてきたから、僕はその手を取って自分の指を絡ませた。
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