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「…こうたろ、怒ってる?」
まったく怒っていない、と言ったら嘘になるかもしれない。
けれど、それよりも寂しい気持ちの方が大きい。
反対されると解っていても、ちゃんと僕の存在を話して欲しかった。
「いや、怒ってないよ」
「嘘…怒ってる」
「怒ってないって」
繋いだ手を解いてソファーから立ち上がる。
こんな時は少し頭を冷やした方がいい、そう思ってスウェットのまま鍵を手にした。
玄関を出る時、響の視線を背中に感じたけれど僕は黙って何も言わずに部屋を飛び出した。
付き合ってから半年、僕と響は順調に愛を育んできた。
いや、そう思っているのはもしかしたら僕だけなのかもしれない。
いつも、どんな時も、僕は僕の思い通りにしてきた。
冷静に考えると、響はいつも僕に振り回されているようにも思う。
響はそれで幸せ?
ふと、そんな事を考えてしまう。
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