oneday scene

9/37
1314人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
部屋を飛び出したものの、財布も持たずに出てしまったせいで行くあてもなくただひたすら歩いた。 暗闇の空に浮かぶ大きな月が今夜は悲しく映っている。 今まで僕と響は、喧嘩らしい喧嘩はしていない。 というよりも、響はいつもこんな我儘で強引な僕に我慢してきたのかもしれない。 そんな事を考え始めたら、途端に不安に駆られる。 響は、僕の何を好きになったんだろう。 付き合い始めてみて、こんなはずじゃなかったと思ったりしていないだろうか。 本当の僕を知って、実は内心、幻滅していたりしないだろうか。 僕はいつも口癖のように『好きだよ』と気持ちを伝えているのに、響は僕が聞かなきゃ答えてはくれない。 響が照れ屋で恥ずかしがり屋なのは理解してるつもりだけど、響から甘えてくる事はほとんどないし、誘ってくる事もない。 僕の方が好きで好きで堪らない、この温度差は一体なんだろう。 あぁ、ダメだ。 いつもはポジティブな僕なのに、響の事となるとすぐネガティブ思考に陥ってしまう。 無言で飛び出してしまった手前、部屋に戻りにくい。 心のどこかで、なんで電話してこないんだよバカ響、って思ってる自分もいて。 僕はつくづく、自分の自己中心的で俺様な性格に呆れてしまう。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!