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それから一週間、僕と響の間に小さな壁があったように思う。
『おはよう』
『おやすみ』
そんな普通の会話の端々に、時々少しだけ他人行儀な空気が混ざる。
それはまるで同居人のように。
この部屋に転がり込んできた事が全ての間違いだったのかと思い知らされた気がした。
「響、今日さ…どっか飯食いに行かない?」
「あ、うん」
「仕事終わったら駅前で待ち合わせしよう」
今朝、玄関先で交わした会話。
最近の響の顔には笑顔はなくて、おまけに食欲もなさそうだ。
そんな響を見ているとこちらも気持ちが沈んでくる。
響は文句を言うことはなかったけれど、ここ数ヶ月は僕も忙しくてどこにも連れて行ってやってなかったし、気分転換にデートでもしようと思った。
休憩時間に喫煙ルームで携帯片手にあれこれ調べていると、司が入って来るなり笑った。
「浩太郎、お前どしたの?なんか最近、すげぇ暗いけど」
「まぁな…色々あんの」
溜め息と一緒に思わずこぼれた本音。
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