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私は悪魔だ。魔界のつまらない争い事に呆れ果て、人間界で暮らすことにした。
魔界の連中ときたら、やれ爵位がどうの、序列がどうの、くだらない話ばかりしている。
悪魔が言う事ではないが、世も末であろう。
しかしだ。人間界における悪魔の風評というのは、またずいぶんと酷かった。
頼み事をすれば魂を取られるとか、串刺しにされて生け贄にされるとか…
残酷な事を考えるものだ。恐らくは、昔誰かが人間界でやんちゃでもしたのだろう。その話に尾ひれが付いたのだ。
まあ、頼み事をされれば相応の対価をもらうが、それは労働によって報酬を得る人間と同じ。魂をもらうなど余程の話である。
それこそ、同じ魂でもないと釣り合わないだろう。
話がそれたが、そんな風評もあって、人間界に来てみたものの、周囲から私への風当たりは厳しかった。
どうして人間は種族の違い程度でこうも毛嫌いするのだろうか。理解に苦しむ。
これは私が、人生…いや、悪魔生の最後に体験した、一人の人間との話である。
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