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堤防の上にある桜の樹に背をもたれて座り、そこから川の流れを見下ろす。
桜が咲く頃、今年も桜の樹の下でこうして人を待っている。
待ち人の名前は大原 渚。
僕の恋人だ。
正確には「だった」なのだろう。
毎年のようにここで彼女が現われるのを待っているけれど、昨年までそれが叶うことはなかった。
ずっと待ちぼうけを食っている。
きっともう僕達は恋人同士ではないのだと思う。
…このまま待っていても、渚が現れることは永遠にないかもしれない。
それでも今年こそはと、こうして桜が咲き始める頃に期待してやって来てしまう。
◯
渚と初めて出会ったのは大学のサークルだった。
どのサークルに入ろうかと、色々なサークルを見回っていた時に渚を見かけたんだ。
今思えば、それは一目惚れに近かったのだと思う。
渚も僕と同じようにサークルを見て回っていた。
その時の僕は彼女に視線を送ることについつい夢中になってしまっていたので、目の前の勧誘に対して適当に相槌をうっていた。
すると、気が付けば「桜研究会」というよく分からない地味なサークルに入る羽目になってしまったんだ。
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