プロローグ

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まるで、僕の心を表現しているかのように… 結局、桜の花びらがすべて散っても、渚が現われることはなかった。 諦めきれず、翌年の桜が咲く頃も同じように彼女を待ち続けた。 更に翌年も…次の年も… ◯ あれから、どれくらいの月日が経ったのだろう… ぼんやりと桜の樹の下でそれを考えた。 ここで彼女を待つことは、僕にとっては苦痛ではない。 いつしか、この場所がとても居心地いいものになっていた。 勿論、このまま彼女が一生、現われない方がいいとは思わない。 一瞬でも構わないから渚に会いたい… 今年は桜が散る前に渚に会えるだろうか…? 桜が咲き始めた頃は、毎日のように渚が来ることを期待してしまう。 もう一度、渚とここで桜が見たい。 僕はそう願いを込めて、頭上の桜を見上げる。 桜の花びらはまだまだ咲き始めたところだった。
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