愛しい傷痕

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*** 少し古びた洋館。 そこが彼の住処。 そして僕の居場所。 彼は日中は普通に働いているし、僕も学校に行っている。 食事だって普通に摂るし、睡眠もとる。 普通の人間と殆ど同じ生活をしている。 違うのはたまに血液を食事とする事だけ。 定期的に血を吸わないと動けなくなるらしい。 動けなくなった後の事を僕は知らない。 彼も言わないし、僕も聞かない。 それが暗黙の了解だった。 ギシリと軋むベッドの上、少しうとうとしながらいると彼が僕の隣にやって来て、そっと髪を撫でてくれた。 「今日の人は記憶も?」 「いいや、今日は血だけ貰ったよ」 彼が摂る食事で一番贅沢で美味なのは『記憶』なのだと言う。
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