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今まで、何人かの人間を愛した彼は、その人間との別れが来た時に『愛した記憶』を吸ってきた。
自分が愛した人が、自分を思って泣かないように。
苦しまないように。
新しい出逢いを心置きなく迎えられるように。
彼はそうやって一人で『愛した記憶』を抱えて別れる。
それはとても哀しい愛し方。
人と違う生き方をして来た彼の、彼なりの愛し方。
「いつか僕も記憶を吸われるのかな…」
僕がそう呟くと彼はそっと髪にキスを落とした。
「このままずっとこうして居られたらいいのに」
彼は優しい。
だから、「そうだね」とは言わないし、未来を約束しない。
「愛してるよ」
そうやって僕を抱く彼はとても冷たい。
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