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「……志織には、苦労をかけたわよね。一人で生活する時間が増えて、学校に家事と忙しくて。ましてや、私のお見舞いに……。遊ぶ暇なんてなかったよね……」
確かに、お母さんが入院してからは家の事は全て一人でこなしてきた。毎日お見舞いにも行ったし、同世代の子と比べたら遊びに行く余裕は時間的にも体力的にもあまりなかったように思う。
「だけど、それは私が選んだ事だから」
……そう。遊びに行く事よりも、私には大切な事があった。
「確かに家事に学校にお見舞いに大変な事もあったけれど、不満はなかった。だって私は、遊ぶよりも少しでもお母さんと一緒にいたかったから。だから、毎日病院に行ってたんだよ」
病室に行っても、ろくに話さずにリンゴの皮ばかり剥いていたけれど。
__ただお母さんの傍にいたかった。
毎日毎日。今日もお母さんが生きている事を、感じたかった。
「そんな甘えん坊だったの?」
「はは。そうだよ」
と、急に恥ずかしくてそっぽを向く。
だけど私には見えた。
夕日の光を浴びて、キラキラと輝くお母さんの涙が……。
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